このブログでは HR/HMバンドの最高傑作アルバムを、読者の皆さんの投票で決定しようとディスコグラフィを兼ねてまとめています。
https://hardrock-daisuki.com/boston-best-album-vote/
「そんであんたはどれなのよ?」と言うことで、私(HARD ROCK 大好き)の BOSTON 最高傑作をレビューさせていただきます。
BOSTON / THIRD STAGE レビュー
前作から8年を要した待望の3rdアルバム
1986年リリースのBOSTON 3枚目アルバム。
アルバムタイトルも文字通りの「Third Stage」。
前作2枚目「Don’t Look Back」のリリースから実に8年という時間を経て、世界が待ち望んだリリースでした。
奇才トム・ショルツの常人離れした細部への拘り、マイペースなアルバム制作の進行度合いに、レコード会社がブチ切れて裁判沙汰になったようですね…。
オープニング曲の「Amanda」は1980年時点で既に出来上がっていたようなので、もう少しレコード会社も我慢していればチョッとは早くリリースされていたかも知れません。
一方深刻なのはバンドのメンバー。
何せ生活掛かってますから大変です。
トム・ショルツとヴォーカルのブラッド・デルプの2人の中心メンバー以外は、この間にバンドを去っています…。
デビューアルバム「幻想飛行」のリリースが1976年ですから10年間でアルバム3枚リリースのペース。
そう考えると…ん?そうでもないか…と変な錯覚に陥りますが…。
さすがに8年待たされるのはファンにとってはちょっときついです。
その辺の普通のバンドだったらとっくに忘れ去られてしまいそう。
でもそこはやはり奇才トム・ショルツの人並み外れたIQ頭脳と音楽的才能により、過去2作が恐ろしいまでに脳内に刻み込まれていました。
本作を聴いたファンの誰もが、脳内の再起動スイッチがONとなり宇宙船BOSTON号の旅に再び出発したのでした。
円熟のBOSTON節で埋め尽くされた至宝の楽曲群
昭和の昔「クイズ・ドレミファどん!」と言うTV番組で、「イントロクイズ」という短いイントロフレーズだけを聴いて曲名を当てるクイズがありました。
BOSTON の奏でる楽曲も、イントロのほんのさわりを聴いただけでそれと解るほどに「BOSTON 節」として円熟の境地に到達していますね。
まさにどこを切り取っても BOSTON であることが解るような、孤高のサウンドとフレーズで埋め尽くされています。
敢えて注文を付けるとすれば、3曲目、6曲目辺りの大仰な幻想イメージのインスト曲でしょうか。
前作の2曲目に収録されていた「The Journey」のメロディが一部導入されるなど、チョッピリまんねりを感じます。
また、名曲「Amanda」メロディの焼き直し感が否めない5曲目など、アルバムとしての系譜もあるのでしょうが、若干新鮮味を欠きますね。
それでも、間違いなくバンドの新たな代表曲の座を獲得したオープニングの「Amanda」。
中盤を構成するメドレー的な展開。
そして終盤の圧巻名曲3連発などなど。
デビュー後10年間で醸成された BOSTON のバンドとしての英知が凝縮されている最高傑作と言えるでしょう。
本作でもトム・ショルツ自身が開発したエフェクター「ロックマン」は大活躍。
お約束の「ノー・シンセサイザー、ノー・コンピューター」もしっかりクレジットされていますね。
メンバー・収録曲
バンドメンバー
- ヴォーカル: ブラッド・デルプ
- 全楽器 : トム・ショルツ
- ギター : ギャリー・ピール
- ドラムス : ジム・マスデア
収録曲
- Amanda
- We’re Ready
- Launch
- Cool the Engines
- My Destination
- New World
- To Be a Man
- I Think I Like It
- Can’tcha Say (You Believe in Me) / Still in Love
- Hollyann
おすすめ楽曲
Amanda
8年越しの感動の再会で流れてきたのは意外にもアコスティックの静かな音色でした。
誰もが予想したスペーシーサウンドへの期待を良い意味で裏切る優しいカッティングが心地良いですね。
8年間もの間、固く閉ざされていた扉、ファンの熱い期待がゆっくりと解放されていきます。
(なんだか7年に一度の善光寺御開帳みたいです…)
そしてブラッド・デルプのこれまた優しく懐かしいヴォーカルが聴こえてくると、何とも言えない安心感に包まれます。
一度聴けば忘れることは無いでしょう…。
「サビメロの美し過ぎるハーモニー」でバンドとしての代表曲入りは即決。
全米のシングルチャートではPVも作っていないのに楽々全米1位を獲得!。
(一方で、全英チャートではランクインすらせずって…おいおい…)
To Be a Man
ここからはアルバム終盤に訪れる「鳥肌ざんまい」の超名曲3連発です。
そう、3連発と言えば1985年4月17日の甲子園球場 阪神VS巨人戦の「バース、掛布、岡田のバックスクリーンへのホームラン3連発」を思い出しますね。
本作の超名曲3連発を目の当たりにすると、当時の巨人の槙原投手が喰らった衝撃が計り知れます(んなわけないか…)。
クライマックスの展開を前に、さすがのトム・ショルツ抜かりがありません。
伏線として6曲目にインスト曲「New World」を配置。
おらぁーーーーっ、これでもかぁーーーーー!
っとリスナーのテンションを煽りまくっておいての7曲目からの3連発です。
1発目の本曲「To Be a Man」は、確か「男として生きていくためには」みたいな人生訓のような歌詞だった気がします。
余りにも切なく感傷的なヴォーカルと、壮大なスケールで鳴り響くスペイシーサウンドが対称的。
まるで大オーケストラの演奏をバックに一人スポットライトに照らされ静かに独唱しているかのような光景が目に浮かびますね。
自分自身の過去~現在~未来をふと見つめ直す良いきっかけになるような楽曲だと思います。
I Think I Like It
そして続く掛布、いや8曲目も「強力わかもと」ですね~。
曲調は一転して軽快。
でもメロディはあくまで美しい BOSTON ならではのハードポップチューンのお出ましです。
甘美なメロディと南アルプスに湧き出る天然水のような透明感を持つコーラス。
全てが穏やかに、まろやかに進行していく楽曲です。
良い出汁が出ていてアクセントとなっているサイドギターのトーン。
何気に結構グルーヴしているベース。
そしてあまりに流麗で隙の無いギターソロ。
緻密な拘りと気の遠くなるような音源を重ね合わせたミルフィーユ BOSTON サウンドは、ヘッドホンで堪能することを強くおすすめしたいです。
Can’tcha Say (You Believe in Me): Still in Love
いよいよ名曲3連発のラストを飾る9曲目。
アルバムも最終コーナーに差し掛かってきた中で、躊躇なく繰り出された禁じ手。
それは、水晶のようなコーラス・ハーモニーによるサビメロ全開でのスタート。
いやー、完全にとどめを刺しにきましたね。
そう、BON JOVIで言うところの「You Give Love a Bad Name」状態です。
相撲の立ち合いで言えば(言わなくても良いのだが)、間合いが今一つ合わないままふわっと立ってしまったら下顎を思い切りかち上げられたと言ったところでしょうか。
衝撃で上体がのけぞり腰が伸びてしまったところを、そのまま一気に電車相撲で寄り切られそうです。
そして、楽曲中盤では BOSTON がプログレッシブともいわれる所以のような曲展開を聴かせてくれています。
曲の終わりはラスト楽曲に向けての余韻を丁寧に紡いでしっかりとバトンを繋いでいます。
まとめ
完璧主義者の奇才トム・ショルツの尋常ではない細部への拘り、マイペースに業を煮やしたレコード会社との法廷闘争の勃発。
両社のぶつかり合いにより、リリースまでに前作2ndアルバムから8年間を要したBOSTONの最高傑作「THIRD STAGE」。
ヴォーカルのブラッド・デルプ以外はバンドを去ってしまいましたが、新たな布陣で宇宙船 BOSTON 号による待望の旅にファンをいざなってくれます。
難なく全米1位を獲得した新たなバンド代表曲「Amanda」を筆頭に、より甘美な美しさ、優しさがまろやかに表現されたとろけるような感覚。
健在の往年のスペーシーサウンドも見事に調和され、極上のアメリカン・ハードロックを体感できる超名盤です。
P.S.
8年ぶりの最高傑作との再会に歓喜、涙したのでしたが、次作4枚目アルバム「Walk On」のリリースには更に8年を要したのでした…。